「病床六尺、これがわが世界である。しかもこの六尺の病床が余には広すぎるのである。わずかに手を延ばしてたたみに触れることはあるが、布団の外へまで足を延ばして体をくつろぐこともできない。 」
と、まず書き出しが美しいんです。私は岩波文庫系の教養ある人がよむんだろうなぁ、という本はあまり読みませんが、『坂の上の雲』(司馬遼太郎)の真之と子規の友情の場面がとっても好きで、子規を知りたくなって読んでみました。
亡くなる二日前まで新聞に連載されていただけあって、ひたすら具合が悪そうです。そして病人だからちょっと自己中。
女性の教育について真面目に語り始めた回は、家の女性たちが家事に忙しくて子規さんにかまってあげていなかったことを不愉快に思って「学がないからだ」と怒り、女性の高等教育の必要性について書いておられます。論理的というより感情的、なんだけど生活が見えてきて面白いです。鋭い!という回もあれば、思い込み激しいなぁ〜と笑ってしまう回もあり、一気に読むというよりは通勤電車で毎日ちょっとずつ味わって欲しい本です。
とはいいながら、やっぱり文章が上手いし、死の間際だけあって悟っています。
「余は今まで禅宗のいはゆる悟りという事を誤解して居た。悟りという事は如何なる場合にも平気で死ぬることかと思っていたのは間違いで、悟りという事は如何なる場合にも平気で生きて居ることであった。 」
病牀六尺 (岩波文庫) 関連情報
今回このCDを購入してとてもよかったと思います。昔教科書で学んだ幾つかの歌も、このCDの朗読を聴いていると新たな発見が必ずあります。
それと知らなかった歌も突然その味わいに驚くことがあります。今回当たり前かもしれませんが、いかに与謝野晶子が天才であったかを知ることが出来ました。若い皆さんにはとてもお勧めできますし、私のような中年ビジネスマンにももってこいです。毎日通勤の車の中で何度も聞いています。聞くたびに深くなる味わい・・きっとあなたにも新たな出会いがあるはず・・。もっともっと知りたくなる・・そういうきっかけを与えてくれるCDです。
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絶版本が入手できただけで満足してます。例の柿食えばの
箇所が私には興味が一入でありました。
病牀六尺 関連情報
マンガと英語で近代文学を覗いてみる本。
明治から昭和初期の12作品が紹介されています。各作品には18ページずつ割かれていて、その18ページが更にいくつかの小部屋に分かれているので、どこからでも読めます。まるであらかじめつまみ食いされる事を想定しているかのよう。気軽に読める本ですね。
マンガと日本語と英語で粗筋が紹介された後、『キャンベル先生のつぶやき』という部屋では原文と英訳文が示されます。日本文学の専門家であるキャンベル先生が、英訳に際して感じたことなども書かれていて、敷居の低い本書の端倪すべからざる一面が垣間見えます。
文学の紹介本としてはかなり異色の一冊かもしれませんが、読み易いです。
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子規の句は色あせない。
句の中に閉じ込められた情景は開いた瞬間五官に訴え、
色彩が、風景が立ち上がる。
そこにあるのは子規がその目で見た視線であり、
一瞬に凝結する味わいだ。
子規の句がなぜ生き続けるのかという
もうひとつの理由はその情報量だと思う。
俳諧の「侘び」「寂び」が哀愁か、それとも
諦観なのか、現代のわれわれにはよくわからない。
子規の句は、ある意味で“気づく”
という行為の集大成であるが、それで終わらないのは
この世界を「見る」ことに対する、
文字通り生命を燃焼させた子規のすさまじいまでの執念が
そこに見え隠れするからだ。
おもしろいのは、晩年になるにつれて
俳諧の決まりきった作風から脱却(逸脱)した結果、
かえって本来の俳諧の「侘び」「寂び」が鮮明に
なってくる点である。
先鋭から普遍への回帰という子規の歩みは、
表現と人との関係に何かひとつの示唆を与えているように思えて
とても興味深い。
子規句集 (岩波文庫) 関連情報