堺屋太一 商品

堺屋太一 日本を創った12人 (PHP文庫)

レビューの高評価につられて読んでみたが、期待通りの名著であった。

本書は、表紙に載っている12人が残した哲学や制度が、現代日本の文化、政治や会社における権力構造、さらに価値観や宗教観、勤労観などにどのような痕跡を残しているかを論じた書。そのような意味で『日本を創った』というタイトルは大変的を射ており、400ページ超と厚めの書ながら一気に読ませる。

日本における「上品」の概念、神仏習合の思想、朝廷と幕府の権力二重構造、公家文化と武士文化の分裂によるそれぞれの発展など、各事象や現代に生きる概念、制度システムが「いつ」「なぜ」「だれに」「どのようにして」うまれ、それらが現代日本人の生活にどれだけ深く、無意識の段階まで根付いているかという事が全編にわたって説明されている。
日本人論とされる本はよく書店でも目にするが、類書とは比べ物にならないほど納得できる記述に満ちている。

これほど人に薦めたくなる本はなかなかないが、歴史を学び始めた中高生、日本文化や価値観の成立に関心がある方は特に必読といえる。肩ひじ張らずに読めて得るものが多い名著である。


日本を創った12人 (PHP文庫) 関連情報

堺屋太一 豊臣秀長―ある補佐役の生涯〈下〉 (文春文庫)

個人読書履歴。歴史小説通算41作品目の読書完。1990/09/30 豊臣秀長―ある補佐役の生涯〈下〉 (文春文庫) 関連情報

堺屋太一 峠の群像 [DVD]

 農本主義から重商主義への転換期という経済小説の要素が入った忠臣蔵です。そのため、仇討ち派の描写と並行して、仇討ちに参加せず、塩田開発に賭ける、石野七郎次(松平健)一派の描写もあります。
 主役の大石内蔵助(緒方拳)は、狂言回しと言ってもよく、浪士の中では、不破数右衛門(小林薫)と片岡源五右衛門(郷ひろみ)の動きが大きな役割を果たし(また二人ともカッコイイ特に小林薫)、堀部安兵衛が完全に霞んでいます。
 石野達は、塩田開発を続けるため武士である事を捨てざるを得なくなりますが、仇討ち成功後、不忠者として赤穂を追われます。大石と別れの際、大石から「多分、誰も間違っていない。」と立場や考えの違いを理解するセリフがあっただけにやりきれません。
 バカ殿丸出しの徳川綱吉(竹脇無我)、天然ボケな町子(吉田日出子)、そんな二人の間で仕事をこなす柳沢吉保(岡本富士太)の描写や、ちょっとベタでくどかったけど、石野と竹島素良(多岐川裕美)、片岡と十文字屋おゆう(古手川祐子)、不破と竹屋美波(樋口可南子)ラブロマンスも彩りをそえてくれました。
 難を言わせて貰うと、オープニング音楽は素晴らしいのに、画面は露光過多でクレジットが読み難い事です。 峠の群像 [DVD] 関連情報

堺屋太一 豊臣秀長―ある補佐役の生涯〈上〉 (文春文庫)

少し歴史好きの方なら、秀長公が秀吉の無二の補佐役だったということはご存じだと思います。
しかし、内治だけでなく、百を超える戦場を往来するなど、意外にも文武両道の名将だということを私は知りませんでした。

それに、名補佐役としてのナンバーツーというのは、参謀とも事務方ともまた違うのですね・・・。
あまりその違いは意識したことがなかったのですが、なるほどと思いました。
手柄は全てトップに譲り、縁の下で支え続ける・・・でも、見る人は見ているし後世にも伝わっている。
なんだかカッコいいなと思いました。

秀長公がいたからこその秀吉の飛躍ですが、逆もまた然りでトップとナンバーツーは一心同体。
秀吉だからこそ秀長公の才を理解し、最後まで信頼し続けたのでしょうね。
(もっとも、血縁が少ない故という側面もありますが)

秀長公亡き後、秀吉の狂気を抑制できる者はいなくなり、豊臣家はほかならぬ当主自身の手で破滅に向かって突き進みます。
一心同体の片割れが失われると共に衰退が始まる・・・なんとも言えぬ寂寥感を覚えました。

ところで、堺屋太一さんは現代の会社組織やビジネス模様と絡めて書くのが好きな方ですね。
言いたいことは分かりますし、間違ってないとは思うのですが、小説として読む分にはどうも興を削がれてしまいます。
そこが残念かな。 豊臣秀長―ある補佐役の生涯〈上〉 (文春文庫) 関連情報

堺屋太一 体制維新――大阪都

橋下徹元大阪府知事と堺屋太一氏の対談があり、それに続いて橋下氏の政治信条に基づく首長としての行動姿勢が分がりやす説明されていた。
行政サイドの理論は「既存の体制およびルール」の枠内でしか行われないので、別の体制やルールでのチャレンジが必要かどうかを判断するのが自治体首長の役目と橋下氏は理解している、それを府民が選挙で選んでいる。だから選挙民のきちんとした判断と投票が重要である。
実は中田元横浜市長の本「政治家の殺し方」の購入時に、合わせて買われている本として紹介されていたので読んでみた。
両者とも色々な新構想や役所の無駄の削減などを志し、次々とマスコミのバッシングを受けている。
マスコミのやり方は、 彼らの権威を傷つけることが目的で、 改革の本筋からははずれ、民主主義の議論のリングの外に引きずり出してパイプ椅子で殴るようである。この巧妙な仕組みについては中田氏の著書で明らかにされている。
両著を一緒に読むことにより地方行政の色々な背景が見えてきて興味深い。 体制維新――大阪都 関連情報